ワバチのおうち

ワバチの巣はどんな形をしているのでしょうか?

ワバチは、樹の洞(ウロ)などの 閉鎖空間 に巣を造ります。

 

巣板1

【 ワバチの巣 】: 巣板は上から下へ、また並行に、何枚も作られます。

 

この写真は、民家の天井裏に営巣を始めたワバチの巣を、

依頼されて、保護捕獲した時のものです。

 

入居後、まだ2週間位しか経っていなかったようで、

巣板も4.1枚と少なく、小さいのですが、

ワバチの巣はこのようになっています。

 

巣板2

【 ワバチの巣 】: こんな感じでハチが取り付きます。

 

巣板には、このように取り付いています。

実際には、巣板が見えないくらいのハチがいて、巣板を覆い尽くしています。

一枚の巣板の両側には、お馴染み六角形の巣房(スボウ)が隙間なく作られています。

 

巣板

【 ワバチの巣板 】: 裏面も同じような状態です。 (クリックで拡大)

 

巣板を切り取ってみると、このようになっています。

上部が、天井に着いていた部分です。

 

上から、

---------------------------------------------------------------------

ハチミツ         : 糖度が上がると蓋が掛けられます。

花粉(蜂パン)    幼虫の餌なので幼虫エリアの近くに貯めます。

幼虫               : 孵化後6日間でサナギになります。

サナギ            蓋が掛けられて10日間で羽化します。

                  : 産卵後3日間で孵化します。

---------------------------------------------------------------------

と綺麗に  エリア分け がされています。

 

羽化した巣房は空になりますが、

育児は、巣板が伸び続けるうちは常に新しい巣房で行われるので、

空巣房には、ハチミツが貯められ、基本的に二度と育児に使われることはありません。

 

すると、巣板上部にはハチミツだけが貯まることになります。

近代養蜂では、この上部に蜜を貯めるという性質を巧みに利用して、

幼虫や蛹を殺さずに、採蜜を行っているのです。

 

そして、巣板を増やしながら下へ下へと、どんどん伸ばしてゆきます。

先端付近に卵を産み、巣板を延ばしては、上の写真のようなエリア分けを行う。

といった作業が坦々と、繰り返されてゆくのです。

 

これに伴い、蜂数 貯蜜 がどんどん増えてゆくことになります。

 

「より多くの子供達を育て、より多くのハチミツを貯める。」

 

これがワバチの巣で、常に行われ続けていることなのです。

 

 

では何故、蜂数と貯蜜をこんなにも増やし続ける必要があるのでしょうか?

このことについては、また別の機会に書こうと思います。

 

 

因みに、

ハチミツが一番上に貯められるのは、最も「 重い 」からで、

世界のミツバチ9種全てに共通する性質です。

 

時には数十キロにも及ぶその重さが、巣の先端にあったとしたら・・・、

いくらハニカム構造の強度をもってしても堪りません。

「巣の付け根」

部分に貯めることで、耐重効果をも実現しているようです。

 

やっぱり 、ワバチ(ミツバチ)って 凄い!!





《 関連リンク 》

 ● エアコン

 ● 扇風機

 ● 打ち水!?


 ● ワバチの巣(巣板)







エアコン

ワバチの巣の中には多くの巣板があり、その中央部では子育てが行われています。

 

育児エリア

【 育児エリア 】: 巣板の中央部に位置し、周りから守られている。

 

巣板中央部は、育児エリアと呼ばれ 、

ここでは、卵・幼虫・サナギが集中していて、いつもハチ達が集まり守られています。

 

巣房2

【 巣房の中 】:巣房1つに対し、1つの卵を産みつけ育てます。 (クリックで拡大)

 

ミツバチの幼虫は、巣房という云わば「個室」の中で温々と育てられます。

上の写真では、

 

・様々な大きさの 幼虫

・蓋掛けされた サナギ

 

がそれぞれ育てられていますが、お分かり頂けるでしょうか。

 

巣房1
【 巣房の中 】:巣房には常に食べ物が補充されます。

 

個室(巣房)では、孵化した幼虫に対し常に食べ物が置かれていて、その日齢に合わせ

 

ワーカーゼリー花粉ハチミツ がそれぞれ与えられます。

ワーカールゼリーは、羽化して直ぐの若いハチ達が、花粉を食べて作り出しています。

花粉はハチミツのように、多く貯蔵することはせず、育児が盛んな時にだけ、

頻繁に運び込みますので、花粉団子を付けたハチが多く見られる時は、

巣内を見なくても、産卵・育児が活発だということが判るのです。

 

また、室温も常に 34~35℃ と育児に最適な温度に保たれています。

 

 

「 何て過保護な!! 」

 

と思わず叫んでしまいそうな程、

至れり尽くせり、手厚く育てられているのです。

ここで一つ疑問が湧きます。

 

「どうやって、常に35℃に保っているの?」

 

ワバチは冬眠することなく、一年中起きて活動しているハチなのですが、

一時的に育児を止める真冬を除き、

常に、正確に、育児エリア温度を 34~35℃ に保っています。

 

何と、

 

寒い冬は、発 熱(暖房)

 
暑い夏は、冷 却(冷房)

 

それぞれ行っているのです。


ワバチの巣内はまるで、温度センサー付きの、冷暖房エアコン完備!?

といった感じですね。

 

驚くなかれ、

実際にワバチは、温度センサーだけでなく、

二酸化炭素濃度(地球温暖化で問題になっている、温室効果ガス)も 感知出来るセンサーを、その小さな体に備えているのです。

 

実際の温度調節法は、これまた凄技なのですが、

これについては、次回以降少し詳しく書いてみたいと思います。

 


因みに、世界にいる9種類のミツバチの中でも、

巣内の温度調節が出来るのは、 閉鎖空間を住処とする

 

ワバチ率いる!? 「トウヨウバチ」「セイヨウミツバチ」

だけなんです。

 

このように、住環境をコントロールすることで、

変温動物であるワバチが、まるで恒温動物のように振る舞えているとも言えます。

 

ワバチ、 過ぎです!!!!





《 関連リンク 》

 ● ワバチのおうち

 ● 扇風機

 ● 打ち水!?

 ● 発熱



扇風機

最近は一時の猛烈な暑さも去り、秋の気配が漂ってきていますが、

ワバチは、暑さをどのようにして凌いでいるのかご存知でしょうか?

 

ワバチは、樹の洞(ウロ)などの 閉鎖空間 に巣を作りますが、

いくら直射日光が当たらない空間であっても、外気温が上がれば、

当然、巣内の温度も上がってきます。


高温になり過ぎると、幼虫が育たず、死んでしまうため、

ワバチは、巣内(育児エリア)を、育児をするのに最適な、



34~35℃



の温度に、何と、常に保つ努力をしているんです。

 

ワバチの暑さ対策には、いろいろな方法があって、これが凄いんです。

 

10.08.29

【 暑さ対策 】:取り付いていた巣板から離れ、暑さを凌ぎます。

 

暑くなり過ぎ35℃を超えてくると、高温を感知して、

まず、ハチたちは巣板から離れて、周りの壁に移動するようになります。

集まっていると暑いので、とりあえず皆で散ろう!!  といった感じですね。

 

P1030062

【 暑さ対策 】:巣門を開けると、こんな感じになっています。

初めて飼育する場合、こんな状態を見てビックリされる方もいるようです。

実は、暑さ対策を行っている姿なんです。

 

これで、育児エリアの温度は下がりますが、それでも追い付かない場合は、

扇風行動 に出ます。

 

CIMG1525

【 巣門前の扇風行動 】:扇風専門の働き蜂により風が送られます。

 

【 巣門前の扇風行動 】:一生懸命風を送り、巣内を冷やします。

 

暑過ぎれば、翅を羽ばたかせて扇風し、外気を入れて暑い空気を巣外へ押し出します。

肢を踏ん張って羽ばたいていますが、1秒間に150回位と、飛ぶ時よりも少ない羽ばたき回数なので、誤って飛び上がることはありません。

 

まるで 扇風機 のようですね。

 

 

扇風循環図

【 巣内の空気循環 】:中にいる扇風蜂と連動し暑い空気を巣外に押し出します。

不思議なことに、ヨウバチでは扇風の方向が逆で、頭を中に向けて、巣内の空気を吸引して外に出そうとします。

 

ミツバチ社会は、分業によって成り立っていて、

採餌蜂、門番蜂、育児蜂などが、専門的にその仕事をこなしています。


ただ、この扇風に関しては、専門に行う働き蜂(扇風バチ)というのは特に存在せず、

皆で協力して温度を下げているんです。

 

巣内のハチたちが、みんなで仕事をするので、

見えるのは巣門前にいる 扇風バチ だけですが、実は、巣内でも、

それに呼応するように、連動して扇風するハチたちが、沢山いるんです。

 

ワバチはこのようにして、巣内の空気を 循環 させ、

効率良く、冷たく、新鮮な空気を巣内に取り入れて、

暑い空気を、巣の外へ、押し出しているというわけなんですね。



凄いぞ、ワバチ!!

 


そして、扇風行動には、もう一つの 効果 があります。

 

幼虫やサナギは生きて呼吸をしていますが、吐く息は人と同じ二酸化炭素(CO2)です。

暑くなると呼吸も激しくなり、閉鎖空間ではCO2濃度が高まることになります。

CO2 は、地球温暖化の温室効果ガスとしても有名ですね。

 

これにより、更に暑くなるという 悪循環 に陥るのですが、

同時にこれは、巣内の 酸素 が薄くなるということでもあります。

 

扇風行動には温度を下げると同時に、酸素不足の解消 という効果もあるのです。


 

やっぱり、ワバチって  凄い ですね!!

 

 

次回は、もう一つの暑さ対策、打ち水!? について書こうと思います。



《 関連リンク 》

 ● ワバチのおうち

 ● エアコン

 ● 打ち水!?

 ● 発熱

打ち水!?

ワバチは、幼虫が死なないように、巣内の育児エリアを常に34~35℃に保っています。

これを超えてくると、

 

発熱体である自らが、巣板から離れる

翅を使って扇風する

 

といった行動をとり温度を下げようとします。

そしてもう一つ、「打ち水」をするんです。

 

夏場の暑い時期は、給水を専門に行う 「給水バチ」と呼ばれる働き蜂がいます。

 

給水

【 吸水する給水蜂 】:蜜用の「蜜胃」に水を貯めます。

普段は蜜胃(ミツイ)と呼ばれる特別の胃に花蜜を貯めますが、吸水時もこの蜜胃に水を入れて持ち帰ります。

 

【 吸水する給水蜂 】

給水バチはあまり遠くへは飛んで行かない(理由は後日)ため、

ハチを飼育する際には、近くに水を置いてやることも必要なんです。

 

 

給水バチは、外に飛び出し盛んに水を汲んできては、巣房壁に吐き戻します。

何と、ここに扇風することで、気化熱 を発生させ、温度を下げているのです。

 

云わば、「 扇風との合わせ技 」という訳ですね。

 

これは手に水を付けて、風に当たればより涼しくなるのと同じ原理です。

まさに、打ち水効果を狙っているんです。

 

例えば、木陰が涼しいのは、

木の葉が呼吸により放出する水分が、蒸発する際に周りの熱を奪っている(気化熱)からです。た、道に水を撒く(打ち水)ことでも涼しくなりますが、これも同じ理屈なんです。

 

何とワバチは、「 打ち水 」 も行っていたんです!!

 

 

また、この時期のワバチは、給水バチとは別に、

花蜜や花粉の採取を専門で行う

 

「 採餌蜂 」も水運びに一役買っているようなのです。

 

ハチミツ造りには、扇風による、花蜜中の水分除去作業が必要です。

水分が多いとそれだけ作業も大変になるため、

普段採餌蜂は、水分の多い花蜜を敬遠します。

 

ただ、この時期は特別で、

わざと水分の多い花蜜を選んで運び込むようなんです。

 

水分が多いということは、蒸発する水も多くなるということで、

打ち水効果も、それだけ得られ易くなるということになります。

 

つまり、一度の往復で、花蜜 を両方同時に運んでいることになるのです。

 

なんとワバチは賢いのでしょう!!!

 

おぉ、 ワバチよ ・・・・・、 もう何も言えません。

 

 

暑い時は、巣板から離れ、水を掛けては扇風する。

この方法で温度を下げることに成功しました。

 

では、逆に寒い時はどのようにして温度を上げているのでしょうか?

このことについては、次回書きたいと思います。



《 関連リンク 》

 ● ワバチのおうち

 ● エアコン

 ● 扇風機

 ● 発熱


 ● 蜜胃(ミツイ)!?




発熱

ワバチは育児エリアを適温(34~35℃)に保つため、様々な方法を取りますが、

防寒対策も凄技を使っています。

 

houkyuu

【 ワバチの蜂球 】:寄り集まって保温しようとします。

 

温度が下がってくると、

まず、働き蜂は育児エリアに寄り集まって 断熱層 を作ります。

ここで、幼虫や仲間の呼吸熱を体毛で捉えて、逃がさないようにしているのです。

 

暑い時とは真逆の 保温行動 ですね。

 

nihonmitsubachi_7043

【 ワバチの体毛 】:全身に生えている体毛が暖気を捉えます。

 

それでも追い付かない時は、

運動による 発熱 を行います。

 

「 飛翔筋 」 という、 (こちらを参照

 

普段飛ぶために使う、翅の付け根の 胸部 にある筋肉を震わせ、

自らの体を 発熱 させて温度を上げます。

この時、翅との連携を外すので、羽ばたきません。

 

エアダッシュ!? して体を温めるような感じですね。

 

・産毛のような体毛で、暖気を包むことで熱を保持し、

・同時に筋肉運動により、自らが発熱体となって温度を上げる。

 

 ワバチは、このようにして 育児エリアの適温 を保っているわけです。

 

この発熱方法、実は外敵からの防御策や、越冬の際にも多いに利用されていたりします。

ワバチの 防御策越冬 については、また別の機会に書こうと思います。





《 関連リンク 》

 ● ワバチのおうち

 ● エアコン

 ● 扇風機

 ● 打ち水!?


 ● 熱殺蜂球(オオスズメバチ襲撃④)

 ● 越冬


 ● フライト マッスル (飛翔筋)







お引越し

その逃去性の高さから、

ワバチを飼うのは難しいと評されたりします。

でもそれって、本当でしょうか?

 

「 逃去 」というのは、

 

巣を放棄して逃げ出してしまうことを言います。

そう、ワバチはすぐ逃げる!?  んです。

私も何度か逃げられました・・・・・・。

 

もっとも、これは人間目線の言い方で、

彼女らにしてみれば、単に棲み辛くなったので、引越した に過ぎません。

 


引越し1

 


ワバチは、

住環境が悪くなりストレスが溜まると、よく引越しをします。

 

より良い住環境を求めて、巣内の全員で新居へと移住するのです。

このような場合を「 計画的逃去 」と私は呼んでいます。

 

一方、オオスズメバチに襲撃された際にも、巣を放棄する場合があります。

これは敵に追われて巣外へ逃げ出すので、これこそ正に逃去ですね。

これを、「 突発性逃去 」と私は呼んでいます。

 

この突発性逃去の場合は、巣内の財産全てを放棄して逃げ出すので、

生き延びることは稀、そのまま消滅する場合が殆どです。

 

人にとっては同じ 逃去 でも、

ワバチ目線で考えると、

実は「 引越し 」と「 逃去 」は全くの別物なのです。

 

このように、お引越しをするワバチですが、無暗にする訳ではなく、

必ず理由があります。

 

・暑くなり過ぎる

・蜜源植物が少なくなる

・蜂数が増えすぎて、巣に収まらなくなる

・外敵に巣板を食い荒らされる

・人による過度な外部刺激

 

など、住環境が悪くなりストレスが溜まる場合です。

逆に、それ以外では、まず引越しはしません。

飼育の際も、それ程神経質になる必要はないという事です。

 

因みに、ヨウバチはまず引越すことは無く、

花のない環境でも居座り続け、そのまま餓死することもあるとか・・・。

(反面、飼い易い!?とも言えるのですが。)

 

私の経験では、

健全な状態の群は、まず引越しはしません。

特に子育てを盛んに行っている時は、少々のことで巣を去ることはないのです。

 

・蜂数が少ない

・暑過ぎる状態が続く

 

といった正常でない場合に、

内検などの外部刺激が急に加わったりすると、高確率で引越します。

 

恐らく、原因は1つではなく、複数、もしくは諸問題が 累積 することで、

我慢の閾値を超えたときに起こるような気がしています。

私の主観ですが、

この場所では 子供を育てられない と判断した際に引越しを決めるようです。


よくよく考えてみると、これは

生き延びるためには 必須の能力 だという事に気付きます。

 

「 この先、此処では生き延びられない 」

 

という状況判断は野生種として身に付けていて当然の能力であり、

この力があったからこそ、これまで日本の大自然で生き延びられたとも言えるのではないでしょうか。

 

座して死を待つ など、野生種にはあり得ないのです。

 

 

逞しいぞ、ワバチ!!!

 

 

一概に「お引越し」と言っても、

数千~2万匹位のハチが一度に出ていくのですから、実はそう簡単なことではありません。

引越しを成功させるための凄技を次回はご紹介したいと思います。





《 関連リンク 》

 ● 準備万端!!





準備万端!!

ワバチは、住環境が悪くなり、

この場所ではもう 子育てが出来ない と判断すると、引越しをします。

でも、ただ単に巣を放棄して出て行くわけではありません。

 

裸一貫、何の計画もなく出ていくのは、

住処と食料、そして労働力となる子供たちを全て失うという事で、

それは、その群 (女王蜂と働き蜂達の一群) の死を意味します。

 

・新たな住処は何処にするのか?

・既に貯め込んでいる食料(ハチミツ、花粉)はどうするのか?

・今育てている幼虫たちはどうするのか?

 

今後の生存を考えると、

引越しに際しては、このような諸問題を解決しなくてはなりません。

 

そこでワバチ達は、この問題を解決すべく、

事前に 周到な計画 を立て、確実に実行 しているのです。

 

 

 

引越し2

 

 

 

まず、引越しを決断すると、

 

・ダンスでその旨を皆に伝達し周知し合います。

 

次に「引越し」と云うくらいですから、当然、新居が必要です。

 

・新たな住処を探す為に探索蜂を放ち見付け出します。

 

新天地で必要な食糧(ハチミツ・花粉)は持って出て行くのですが、

持ちきれない食料が発生しないよう、量の調節を始めます。

 

必要以上のハチミツを作っても、置いてゆくだけになる場合は、

無駄なハチミツ造りを止めます。

 

・花蜜の採取を徐々に減らして行きます。

 

また、産卵も止め、今育てている幼虫分の餌(花粉)しか集めません。

 

・花粉もあまり運び込まなくなります。

 

傍で見ていると、出入りが少なくなってゆくのが分かります。

そして、大切な労働力となる幼虫たちは、

 

・育児中の幼虫たちは全て育て上げます。

 

そして、今育てている子供たちを羽化させると、決行するのです。

稀に、時間的にどうしても育てられない幼虫や、羽化を待てないサナギが出る場合があります。こんな時は、食べられて間引かれたり、置いて行かれたりします。

この間、約1ヵ月くらい。

 

それは、ある晴天の早朝(と思われます)に行われます。

貯めていた巣内のハチミツ、花粉、全てを持って、

皆で一斉に巣から飛び出し、一度近くの木の枝などに止まって蜂球を作ります。

そして、既に探し出してある新居へと移住して行くのです。

 

出て行った後は、もぬけの殻状態になっています。

実際に目の当たりにすると、お見事!! としか言い表せません。

 

せっかく大事に飼っていたのに、ハチミツも全く残さず出ていくとは・・・・・。

「 逃去 」と呼ばれる所以でしょうね。

 

 

計画を立て、皆で協力し合って実行し、そして成功させる・・・・。

 

なんとワバチは 賢い のでしょう!!!





《 関連リンク 》

 ● お引越し







シマリング

「 シャーッ 」、「 シューッ 」、「 シュワーッ 」

 

ワバチを飼育されている方なら、よくご存知だと思います。

巣箱に近づいたり、振動刺激 を与えたりすると起こる、あの「 威嚇音 」です。

 

ワバチは、外敵が巣に近づいてきた場合などに、

 

「 シマリング 」 (shimmering)

 

と呼ばれる、威嚇行動をとります。(ヒッシングと呼ばれることもあります)

 

巣内にいるハチたちが、一斉に を震わせ、 を発するのです。

この行動は 波紋 が伝わるように連動して行われ、

この時発せられる 威嚇音 が、冒頭に書いたように聞こえて来るんです。

 

【 シマリングの様子 】:「シャーッ」という音が聞こえてきます。

 

音によって威嚇するこのシマリングは、振動刺激 によって誘発されるので、

クマや人など、主に 哺乳動物 に対して発達させてきたものと考えられています。

 

実は、ワバチはシマリングの他に、もう一つ 威嚇方法を持っています。

 

キイロスズメバチなどが巣に近づくと、お尻をフリフリする

 

「 振身行動 」

 

と呼ばれる方法です。(詳しくはこちらを参照)

 

この フリフリ行動 を見ると、明らかにスズメバチは嫌がることや、

羽音ではなく、敵の姿を で認知することで誘発される点などから、

この振身行動は、対 昆虫用 に発達させたものと考えられています。

 

 

何故、2種類の威嚇行動が存在しているのでしょう?

 

振身行動の起源は、

オオミツバチヒマラヤオオミツバチこちらを参照)に見ることが出来ます。

この2種は、明るい 開放空間 に巣を作ります。

 

外敵のスズメバチなどが近づくと、

巣板を取り囲む、カーテン蜂 と呼ばれる防御担当のハチたちは、

皆で連動しながら 振身行動 をとり、敵を威嚇・牽制します。

 

その様子は、あたかも 波紋の広がるが如し です。

 

【 オオミツバチの振身行動 】:(Shimmering bees drive hornet awayより)

  この見事な ウェーブ が 視覚的 に敵を牽制しているようです。

 

同じ熱帯アジアを起源とするワバチに、

お尻をフリフリする、同様の行動が見られても何の不思議もありません。

 

ただ、ワバチは寒冷地である日本に進出していく過程で、

暗い 閉鎖空間 に巣を作るように進化してきました。

 

オオミツバチなどと違い、巣内で行う振身行動は、

外敵には全く 見えない ため、何の意味も持ちません。

 

そこで、ワバチは、この振身行動を、

視覚ではなく、聴覚 へ訴えられる形 に変化させたと考えられます。

 

つまり、シマリング という、 による威嚇方法を新たに獲得したのです。

 

遠い昔から行っている、目で判断して行う「 振身行動 」は、

対 昆虫用に、巣門前の明るい場所だけに残し、

 

暗い巣内では、振動を感知して行う「 シマリング 」を、

対 哺乳動物用に、発達させたと考えられるのです。

 

これが本当だとしたら、なんとワバチは賢いのでしょう!!

 

 

 

振身シマリング

 

 

 

ちなにみ、

実は、ヨウバチは振身行動もシマリングもしません・・・・。

威嚇なしに、すぐ攻撃してくるんです。

なんと 乱暴 なミツバチでしょう!!!

 

一度警告し、逃げる機会を与える奥ゆかしさ、

 

まさにワバチは 和蜂 」 ですね!!

 

 

よっ!! 日本人!!!

 

 

 

 

余談ですが、

実は、このシマリング、女王蜂の存在の有無を判断する 目安 にもなるんです。

 

ワバチを飼育していると、女王蜂の有無を知りたい場合が出てきます。

この行動がとれるのは、ハチたちが 組織だって動いている 証拠で、

そこには女王蜂の存在があります。

 

つまり、シマリングをしていれば、女王蜂は 存在している ということなんですね。





《 関連リンク 》

 ● おしりフリフリ ・・・・!?

 ● ハニーハンティング

 ● 集団襲撃




ナサノフ腺!?

「 フェロモン 」

 

何だか艶かしいイメージもありますが(私だけでしょうか・・・・)

この言葉自体を知らない人は、いないと思います。

 

フェロモン というのは、

同種の仲間に、ある行動を起こさせる 化学物質 のことで、

多くの動物、昆虫、微生物の間で、一種の コミュニケーションツール として使われているものです。

 

つまり、仲間だけに伝わる「言葉」ということですね。

 

ワバチは、社会性昆虫 と呼ばれるように、多くの仲間と生活をしています。

当然、様々な方法で、仲間との 情報交換 を行っています。

 

・触角どうしの接触による伝達

・振動(ダンス)による伝達

 

といった 物理的な方法 だけでなく、

この フェロモン という 化学物質 を使った、間接的な方法 も使っているんです。

例えば、

 

・集合フェロモン:仲間を集めます。

・警戒フェロモン:仲間に外敵の存在を知らせます。

・女王フェロモン:働き蜂の産卵を抑えたり、雄蜂を誘引します。

・幼若フェロモン:幼虫が出し、給餌を活発化させます。

・攻撃フェロモン:外敵に対する、一斉攻撃を促します。

 

などが有名です。

この中の、集合フェロモン警戒フェロモン は、

 

「 ナサノフ腺 」

 

と呼ばれる、お尻先端付近にある 同じ分泌腺 から、放出されます。

この時、同時に羽を使った扇風を行い、遠くに拡散させる行動もとります。

仲間たちは、この化学物質(情報)を 触角 で受け取ることになるのです。

 

ナサノフ腺0

【 ナサノフ腺からのフェロモン放出 】:赤丸印の白く見えるのがナサノフ腺。

   換気(こちらを参照)を行う扇風蜂とは逆の方を向き、外に向かって拡散させます。

   ナサノフ腺からの放出時は、このようにお尻が高く上がり、白く見えます。

 

実は、この2つのフェロモン、何と、成分が 同じ なんです。

つまり、その働きによって呼び名が変わるということです。

 

集合フェロモン は、分蜂(巣別れ)や 逃去(引越し)の際に主に使用され、

巣の外にいる仲間たちに、

 

「 ここが巣だぞ、集まれ!! 」

 

と呼び集める効果があります。

 

【 集合フェロモン放出の様子 】:これは分蜂時で、仲間に巣の在り処を伝えています。

   巣門付近で、多くのハチが集合フェロモンを出しています。(お尻に注目です。)

   この状況下では、集合目印 と認識するんです。

 

 

一方、警戒フェロモン は、外敵が近づいてきた際に使用され、

 

「 敵がいるから気を付けろ!! 」

 

という警戒を促す効果があります。

このフェロモンが出されると、巣から飛び立つハチが減っていきます。

 

人が近付いた時にこの警報が出ると、門番蜂が顔の周りを飛び回り、威嚇されます。

暫くじっとしていると、敵ではないと認識し、すぐに警戒が解除されます。

 

【 警戒フェロモン放出の様子 】:戻って来たハチのお尻に注目して下さい。

   採餌から戻ってきたハチが、「ヤバイのがいるから気を付けろ!!」と言っています。

   この状況下では、警戒警報 と認識するんです。

 

つまり、状況によって、

 

「 同じ言葉が、違う意味を持つ 」

 

ということでなんです。

「ハシ」は「箸」「橋」「端」となりますが、これと同じ!? ですね。

 

何と、ワバチは、言葉の 真意 まで解釈できるんですね。

 

 

ワバチ、凄過ぎです!!





《 関連リンク 》

 ● 扇風機

 ● コミュニケーション







サーカディアン・リズム !?

目覚まし時計もないのに、毎日 決まった時間 に目が覚める。

 

こういった 経験 をしたことはないでしょうか。

 

これ、「 体内時計 」の仕業なんです。

 

動物、植物、菌類、藻類など、ほとんどの生物は、体の中に 時計 を持っていて、

これが、時間を測定 し、一日の体の 生理的な働き を、変化させているようなんです。

 

この時計、ほぼ、一日周期で動いているので、概ね一日(サーカディアン)という意味で、

 

「 サーカディアン・リズム 」 (概日リズム)

 

と呼ばれています。

 

もちろん、ワバチの体の中にも、この時計はあって、

 

一日の中で、決まった時間帯に、その行動をとる。

 

といった、一日のリズム が存在しているんです。

 


例えば、定位飛行時騒ぎ)が、最も分かりやすい例かと思います。

 

採餌に出る前の若いハチたちは、

決まってお昼過ぎくらいに、巣の場所の記憶飛行を行います。

 

このような、決まった時間帯に行われる行動 は、

体内時計の働きにより、リズムが刻まれている ことの なんです。

 

また、学習能力 にも、リズムがあることが分かっています。

 

ワバチは、

実は、午後よりも、午前中の方が 学習能力が高い そうなんです。

 

 

午前中

 

 

実は、これ、非常に理に適っていて、

この時間帯に、頭脳明晰であることは、採餌活動を効率化 させることに貢献するんです。

 

というのは、

ワバチがよく行く花は、午前中に花蜜を分泌 するものが、多いんです。

 

さらに、

 

・午後から夜の前半にかけては、学習能力が 低下 し、

・夜明け前から午前中に、再び 高く なる。

 

というリズムを刻んでいるようなんです。

 

つまり、花の開花に 合わせて、脳を活性化させているということなんですね。

 

当たり前といえば、当たり前なのかもしれませんが、

体の生理的リズムが、花の開花リズムに 同調 しているなんて、

やはり、驚異の適応 としか思えません。

 

きっと夜は、脳を休ませていて、英気を養っているんでしょうね。


給餌などは、もしかしたら、

あまり頭を使わない、夜間 に行う方が、ワバチにとっては良いのかもしれませんね!?









プロフィール

やっこ

Author:やっこ
ニホンミツバチに関する様々なことを、
気ままに思いつくまま書いてます。
可愛く癒されるワバチの魅力を、たくさん発見したいと思っています。

アルバム
お知らせ!!
ブログに関する、お知らせをしています。

(現在、不定期に更新しています。)


・系図・作成ツール 公開!! → こちら


・採餌圏MAP 公開!!
 → こちら

Gallery
最新記事
ブログ内 検索
カテゴリ
月別アーカイブ
記事一覧

記事の一覧表示


管理画面 ( )
最新コメント
やっこ の オススメ書籍

ワバチに関する、おすすめの本です。

ぜひ、読んでみて下さい!!




ニホンミツバチが日本の農業を救う



ハチはなぜ大量死したのか