分 蜂(その3)

ワバチは、分蜂 という 一大イベント に向けて、

一年という、長期 にわたって、準備を進めてくわけですが、

 

実際に、分蜂を行うに当たっては、

実は、直前に、ある 重要な準備 を必要としていることが、わかっています。

それは、新たに、

 

 

オス蜂    女王蜂

 

 

を、生み出すこと なんです。

 

 

    hati

 

 

 

ワバチの 繁殖行動 というのは、正確には、分蜂も含めると、

実は、3つ の段階を、踏んでいるんです。

 

 

 

繁殖

 

 

 

繁殖個体 の 産出(雄蜂・女王蜂の生産)

      オス蜂 が、先に生み出され、女王蜂 が、続きます。

 

分 蜂(巣別れ)

      1~4回 の分蜂が、通常、行われます。

 

(交尾飛行)

      新女王蜂 のみが、交尾を行います。

 

 

つまり、分蜂 という、コロニーの 分割作業 の 前に

新たに、オス蜂女王蜂 を、ほぼ同時に、生み出しているわけなんです。

 

そして、分蜂が終わると、生まれて間もない 新女王蜂 は、

すぐに、他巣のオス蜂 との、交尾 のために、交尾飛行 を行うことになります。

正確には、この 交尾の成功 をもって、

 

繁 殖 成 功

 

と、なるわけです。


ただ、ここで、疑問 が生じます。

ワバチのコロニーは、女王蜂の存在 なくして、正常な活動は行えません。

コロニーの分割に、新女王蜂の存在 が、不可欠 なのは、分かりますが、

 

なぜ、同時期に、オス蜂を生み出す必要があるのでしょう?


 

それは、一刻も早い交尾の成功 が必要だからです。

 

分蜂したての、まだ何もない、ゼロの状態 のコロニーにとって、

生活の全てを担う、巣板 と、貯蜜の確保 は、死活問題急務 ということになります。

実際、新居で 最初 に行う仕事というのは、巣板作り花蜜採取 です。

 

ただ、いくら、巣板が大きくなり、貯蜜が確保されたとしても、

女王蜂の産卵 がなければ、コロニーの担い手となる、働き蜂 は増えていきません。

まだ 精子を持ない、新女王蜂にとって、働き蜂を産むためには、

 

 

オス蜂 との 交尾

 

 

は、必須 で、これ以外に、方法がないわけです。

 

・この時期、働き蜂たちの寿命は、約 1ヵ月

・働き蜂が生まれるまでには、19 日間

 

そう、この分蜂直後の活動は、時間との勝負 だったんです。

 

交尾の成功 なくして、その後のコロニーの発展など、あり得ない わけですから、

一刻も早い交尾成功 と、産卵開始 が、必要となるわけです。

 

同時期に、同じ地域のコロニーが、一斉に 繁殖行動 を開始するのも、

また、オス蜂を、同時期 に生み出すのも、

 

全ては、交尾 を成功させるため

 

という、ワバチの、種としての戦略 だったわけですね。

(交尾については、また後日、改めて書こうと思っています。)

 

凄いぞ、ワバチ!!

 

 

そして、分蜂に際しては、このオス蜂の存在は、不可欠 のようで、

女王蜂のみ の生産(オス蜂のいない状態)では、分蜂行われない ようなんです。

どうやら、分蜂 雄蜂 は、切っても切れない関係 にあるようですね。


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【 オス蜂 】:目が大きく、腹部が太く、黒いのが特徴。春夏秋冬 より )

 

 

1つ、ここで、不思議 なのは、

女王蜂よりも、オス蜂の方が、先行して生み出される、という事実です。

 

オス蜂と女王蜂の生産は、実際には、セット になっているわけですが、

オス蜂の方が、2週間 ほど先行して、スタートすると云われています。

 

これは、いったい、どういうことなのでしょう?

 

交尾成功までに、時間的猶予 が無く、待ったなし の状況にある、新女王蜂にとって、

 

生まれた時には、既に、オス蜂 が存在してくれている。

 

という、この 状況 は、オス蜂誕生を待つ という、

時間的なロスを 回避 でき、それだけ、交尾の成功率 も上がる、と考えられます。

 

実際には、自分のコロニー内 のオス蜂とは、交尾することは ない のですが、

同時期に生み出される、他巣他コローニー)の、オス蜂がいるわけですから、

同じこと ですよね。

 

また、誕生までに掛かる日数が、女王蜂では 15日間 、オス蜂では 21日間

オス蜂の方が、生育日数が長い という事実も、オス蜂の生産を先行させる理由

になっているのではないかと、個人的には考えています。

 

興味深いのは、この 事例 が、実は、ワバチをはじめとする、ミツバチ だけではなく、

スズメバチ類 や、アシナガバチ類 など、社会性を持った、ハチの仲間でも、

多く 見られる、ということなんです。

 

それが 効率が良いから であることは、間違いないのでしょうが、もしかしたら、

社会性 を持っていることと、何か関係しているのかもしれませんね。

 

 

さて、ワバチは、このように、

分蜂を行う、 約1ヶ月位前 から、オス蜂と女王蜂 を生み出していくわけですが、

 

ここで、その様子を、少し見てみたいと思います。

 

ワバチは、新たな女王蜂を生み出すための、王椀王台)という特別巣房を作る前に、

まず、雄蜂用の、通常より、一割ほど 直径の大きい、六角形の巣房を作り始めます。

 

その後、女王蜂によって、この巣房に、未受精卵 が産み付けられ、21日後 には、

オス蜂 が誕生してくることになるんです。

(オス蜂は、何と、未受精卵から生まれてくるんですよ。)

 

この時、生まれてくるオス蜂は、コロニーの 約1割 位と云われていて、

1万匹のコロニーだとすれば、千匹のオス蜂が、誕生することになるわけですね。

 

そして、この未受精卵の産卵から、遅れること 約2週間

ここでようやく、王椀 を作り始め、新たな 女王蜂の育成こちらを参照)

取り掛かることになるわけです。

 

この時、作られる 王台分蜂王台) は、数 個10個前後 と言われています。

 

一足先に産卵されていた、 オス蜂の羽化 が始まると、

穴の開いた、繭蓋まゆぶた)が、巣門付近 に、多く見られるようになります。

 

mayubita

【 オス蜂 の 繭蓋 】:羽化後に落ちたもので、中央に、小さな穴が開いています。

 

実は、ワバチのオス蜂の まゆ)には、特徴があって、

先端中央部の、 に当たる部分に、小さな穴 が開いているんです、

 

この 小さな 穴の開いた蓋 が、多く確認できるようになってから、数日経つと、

 

最初の 分蜂 が始まる。

 

と言われています。

 

今まで、コロニー内で、産卵していた、母親 に当たる、女王蜂 が、

巣内の、約半数 の働き蜂や、一部のオス蜂と共に、巣を出ていくことになるんです。

に当たる、新女王蜂 が生まれる 直前 に、分蜂を行うわけですね。

 

実は、これは、

 

最初の 新女王蜂が 誕生 する、1~6日前

 

に当たるのですが、つまり、

 

 

オス蜂 誕生  ~  最初の 新女王蜂 誕生

 

 

までの、約1週間(それ以上の場合も有)の中 で、最初の分蜂 が行われる。

ということになるわけです。

 

また、何故か、この 最初の分蜂 は、


桜 が満開になって、10日目位

 

に当たる時期と、一致 している。という 観察報告 もあるんです。

興味深い、一致 ですね。

 

 

 

分蜂hyou

 

 

 

いつ、分蜂が行われるかは、このような 目安 で、判断 できるわけです。

 

ただ、もちろん、例外 もあります。

 

オス蜂が生まれても、王台 が出来なかったり。

王台が出来ても、分蜂 しなかったり。

 

といったことが、起こることがあるんです。

 

では、何故、分蜂したり、しなかったりが起こるのでしょう?

 

 

また、そもそも、ワバチたちは、

いったい、何を感知して、分蜂直前の準備 を開始しているというのでしょう?

 

 

 

次回はこの、分蜂の引き金となる要因 について、考えてみたいと思います。







《 関連リンク 》

 ● 分 蜂(その1)

 ● 分 蜂(その2)

 ● 分 蜂(その4)


 ● クィーン(その6): 王台!? (その2)







関連記事

分 蜂(その2)

多くの生物には、繁殖期 というものがあり、

その時期に集中して、次世代を残すための、繁殖活動 が行われています。

年中、盛っているのは、きっと、人間くらいなのでしょうね。

 

ワバチの場合は、地域によって、 はありますが、だいたい、

 

4月 ~ 7月

 

の、初春~初夏 にかけての時期、と云われています。

 

この時期になると、ワバチたちは、突然 のように、分蜂を始めるわけですが、

実は、この分蜂に至るまでには、長く、地道な 準備 が行われていたんです。

 

その準備は、何と、前年 の分蜂直後にまで、さかのぼることが、出来るんです。

 

ワバチの活動、その 全て は、

 

 

「 分蜂 に 帰結 する 」

 

 

といっても、過言ではないのかもしれません。

 

その年、無事に 分蜂繁殖)という、一大イベントを終えると、

新たに生まれた、コロニーの多くが、それぞれの新天地で、新たな生活を、

ゼロ から、スタートさせることになります。

 

そこにあるのは、居住空間だけ 、巣板も無ければ、貯蜜もありません。

 

ワバチの生きる目的が、子孫を残すため、とするならば、この新天地でのスタートは、

次の分蜂へ向けての、最初の1歩 ということにもなるわけです。

 

 

生活史

     ※ イラストをクリック

 

 

分蜂交尾蜂数・貯蜜の確保越冬分蜂 (翌年)

 

これが、ワバチ コロニーの、1年間 の、生活サイクル ですが、これを、

一日 の活動にまで、落とし込んでみると、

 

巣作り産卵育児採餌(花蜜・花粉)貯蜜

 

という、地道な作業の 連続 であることが分かります。

日々の、この絶え間ない活動によって、巣板は大きくなり、巣房は増加していきます。

そして、多くの 育児室貯蜜倉庫 が確保できるようになることで、

 

蜂 数貯 蜜 量

 

共に、増えていくことになるんです。

 

このサイクルの、繰り返しこそが、ワバチの 生活の全て であり、

翌年の春に行われる、大量の ハチ貯蜜 を必要とする、分蜂 へと向けた、

 

準 備 活 動

 

ということにも、なるわけです。

 

ただ、次の分蜂へ 至る までには、そう簡単なことではありません。

それを阻む、様々な 障壁 が、立ちはだかることになるんです。

 

春先の交尾失敗種々の病外敵人による駆除不測のトラブル

そして、気温や天候など、自然環境 によっても、その 行く手が阻まれ てしまいます。

この中でも、特に大きな 2つ 存在します。

 

1つは、オオスズメバチ の脅威です。

 

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【 オオスズメバチ襲撃 】:無残なワバチの死体が転がっています・・・。

 

私の観察では、野生の自然群約5~8割 が、これにより、滅ぼされ、消滅 します。

敵わぬまでも、蜂数の増加は、この オオスズメバチ に対する上でも、有効 なんです。

こちらを参照

 

そして、何とか、この脅威をくぐり抜けても、その先には、2つ目の 越冬 という、

長く、辛い試練 が待ち構えています。一難去って、また一難、というわけですね。

 

こうして、初冬までの、半年ちょっと の間で、少しずつ、少しずつ、越冬に備えた、

たくさんの 蜂数 と、大量の 貯蜜 を、巣の中に、蓄えることになるんです。

 

逆に云えば、この時点で、蜂数 や 貯蜜量 が 少ないと

冬を乗り切ることが出来ず、分蜂にまで、たどり着けない わけです。

 

越冬中には、採餌活動が 制限 されてしまうため、それまでに蓄えておいた、

大量の貯蜜を使って、巣内を 暖房 しながら、皆でじっと耐え忍びます。

 

そして、産卵・育児 も、一時的には、止まるものの、すぐに再開され、真冬でも、

少しずつ蜂数を、増やし続けていくんです。

 

この暖房と、特に育児は、命綱 となる貯蜜を、大量に消費 させることになります。

そう、この時期の子育ては、命懸け なんです。

 

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【 越冬失敗 】:越冬に失敗し、皆で固まって息絶えています。

 

晩冬 になると、ようやく、徐々に 蜜・花粉源 となる花が 増え 始めます。

そして、三寒四温さんかんしおん)を経て、徐々に平均気温も 上がって いきます。

 

艱難辛苦かんなんしんく)を乗り越えた、ワバチたちは、待ってましたとばかりに、

猛烈な勢いで、花蜜・花粉 を集め出し、女王蜂 も、それに呼応するように、

本格的な、産卵 を開始することになるんです。

 

コロニーを分割する、分蜂 には、多くのハチと、多くの貯蜜が必要となるため、

この時期、急激に 蜂数と貯蜜量 を 増やすことで、いつでも分蜂が行えるように、

準備 を進めていくわけなんです。

 

ここで、ようやく、分蜂 という 一大イベント を 迎えることになります。

 

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【 分 蜂 】:幾多の苦難を乗り越え、歓喜の舞 のようにも見えてきます。

 

ここまで、簡単に準備の流れを、書いてきましたが、

実は、無事に、次の年の分蜂まで、たどり着ける コロニーは、野生の自然群 では、

全体の約1~3割 というのが、私の観察結果です。

 

ワバチは本当に、本当に、過酷な自然を生き抜き、分蜂までたどり着くんです。

 

こうして、巣別れした、多くのコロニーは、再び、

翌年の分蜂へと向け、ゼロの状態から、準備を開始 することになります。

 

一見、春になると、突然 のように行われる 分蜂 ですが、ワバチたちは、

実は、このような、一年を通じた、地道な努力と、周到な準備を行っていたんですね。

 

一年の流れを理解し、今、ワバチたちは、何のために、何をやっているのか?

飼育をする場合にも、常にこのことを考えながら、見守る必要があるように感じます。

 

こんな、ワバチたちの、命を懸けた苦労を知ってしまうと、申し訳なくて、

益々、採蜜に対して、気が重くなってしまうのは、私だけでしょうか・・・・。

 

採蜜とは、強奪・・・。

 

う~ん、本当に、ごめんなさい、ワバチ。。。

 

 

ところで、何故、春から初夏にかけてのこの時期に、分蜂は行われるのでしょう?

 

それは、新たに生まれた、コロニーにとって、

この時期が、その後の 生存率 を上げるうえで、最も適した季節 だからでしょう。

 

蜜・花粉源となる花が、たくさん 咲き乱れる この時期は、

ゼロから、生活をスタートさせる コロニー にとっては、願ってもない季節 です。

 

また、スタートが 早いほど、越冬のための準備期間も、長く取れますから、

充分な 蜂数、貯蜜量 を蓄える可能性も、高まり ます。つまり、この時期でないと、

越冬までの、準備が 間に合わない 可能性が高い、ということなんです。

(まれに、初秋からのスタートでも、分蜂までたどり着ける場合もあります)

 

ただ、ここで、疑問が生じます。

 

春さえ来れば、必ず分蜂は、行われるのでしょうか?

 

答えは、 なんです。

 

春が訪れ、気温 が上がり、周囲に花が たくさん 咲き始めることで、活発になり、

急速な 育児 や 採餌活動 によって、分蜂への準備が 進む のは、事実ですが、

これだけでは、分蜂は 行われない んです。

 

実は、分蜂が行われる直前には、ある 特別な準備 が行われる必要があったんです。

 

いったい、それは、どんな準備なのでしょう?

 

 

次回は、この 分蜂直前の準備 について、書いてみたいと思います。







《 関連リンク 》

 ● 分 蜂(その1)

 ● 分 蜂(その3)

 ● 分 蜂(その4)


 ● オオスズメバチ

 ● 越 冬







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ニホンミツバチに関する様々なことを、
気ままに思いつくまま書いてます。
可愛く癒されるワバチの魅力を、たくさん発見したいと思っています。

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